私たちの食生活にはさまざまな「糖」が存在します。その中でも、「オリゴ糖」という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。オリゴ糖は「腸内環境に良い」「カロリーが低い」など、健康面で魅力的なポイントを持っている反面、「砂糖やはちみつとどう違うの?」「どんなふうに使えば良いの?」と、詳細を知らない方も少なくありません。
本記事では、オリゴ糖の基礎知識や腸内環境への働き、さらにおすすめの摂取方法などをわかりやすく解説します。日々の食事に取り入れる際のポイントや、摂りすぎによる影響などにも触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。
オリゴ糖とは
「オリゴ糖」は、私たちの身体にとってエネルギー源になる「糖」の一種です。しかし、糖にはさまざまな種類があり、オリゴ糖と呼ばれるものの中にも細かな特徴や種類の違いがあります。ここではまず、「糖」とは何かという基本から解説していきます。
主な糖の種類
糖(炭水化物のうち消化・吸収されるもの)は、その分子の大きさによって大きく3つに分類されます。
– 単糖類
– 少糖類(オリゴ糖)
– 多糖類
さらに、人工甘味料などに使われる「糖アルコール」も、糖の一種として捉えられることがあります。それぞれの特徴を見てみましょう。
■単糖類
ブドウ糖(グルコース)や果糖(フルクトース)など、これ以上分解されない最小単位の糖を指します。ブドウ糖は全身の細胞を動かすエネルギー源として非常に重要です。のちに説明する少糖類や多糖類は、これらの単糖類が複数つながった形をしています。
■少糖類(オリゴ糖)
単糖が2~10個結合している状態の糖を指し、「オリゴ(oligo)」はギリシャ語で「少ない」という意味です。なかでも、単糖が2つ結合しているものは「二糖類」、3つ結合しているものは「三糖類」と呼ばれます。二糖類の代表例が砂糖(ショ糖)ですが、それらは小腸で消化・吸収されやすいため、エネルギー源になります。
一方で、一部のオリゴ糖(難消化性オリゴ糖と呼ばれるもの)は、小腸でほとんど吸収されないまま大腸まで届き、そこで善玉菌のエサとして利用されるという特徴を持っています。
■多糖類
単糖が多数つながった形の糖で、でんぷんが代表的です。単糖や少糖類と比べて消化に時間がかかりやすいとされ、食後の血糖値の上昇が穏やかな場合があります。多糖類にも、人の酵素では分解されずに食物繊維として大腸まで到達するものがあります。
■糖アルコール
キシリトールやソルビトールなどが該当し、果物や野菜・発酵食品から取り出される人工甘味料として用いられています。消化・吸収されにくく、エネルギー源としては利用されにくい性質を持ちます。摂りすぎるとお腹が緩くなることがあるため、注意が必要です。
オリゴ糖の種類
オリゴ糖の中にもさまざまなバリエーションがあります。原料や製造方法、結合の仕方が異なることで、甘味の強さや消化されやすさ、腸内細菌への影響などが変わってきます。ここでは代表的なオリゴ糖をいくつか紹介します。
■乳糖(ラクトース)
母乳に多く含まれる二糖類で、赤ちゃんが必要とする糖質源のひとつです。腸内の乳酸菌やビフィズス菌を増やす作用があるため、整腸効果やミネラル吸収促進作用に期待ができます。
■ガラクトオリゴ糖
乳糖に酵素を作用させて作られるオリゴ糖です。牛乳に含まれる乳糖を原料とするため、ヨーグルトや乳製品によく使われています。高齢者の便秘や下痢を改善する研究結果が報告されており、腸内環境ケアの観点から注目を集めています。
■フラクトオリゴ糖
にんにく、たまねぎ、ごぼう、バナナ、はちみつなどにも含まれているオリゴ糖で、日本の食品会社が世界で初めて機能性オリゴ糖素材として開発したことでも知られています。甘味はやや弱いものの砂糖に近い風味を持ち、菓子類などにも応用されています。
■イソマルトオリゴ糖
みそやしょうゆ、はちみつなどに天然成分として含まれるオリゴ糖です。人工的には、とうもろこし由来のでんぷんに酵素を作用させることで製造されます。熱や酸に強い特性を持つため、シロップやテーブルシュガーなどの形で幅広く利用されています。
■シクロデキストリン(α-オリゴ糖など)
ブドウ糖が6~8個ほど輪のように結合したオリゴ糖です。輪の内側に別の成分を取り込む「包接(ほうせつ)」という特徴があり、コレステロールなどを吸着して体外へ排出させる働きが期待されます。ブドウ糖6個のものは「α-オリゴ糖」と呼ばれています。
砂糖やはちみつとは何が違う?
甘味料としてよく知られる「砂糖(ショ糖)」は二糖類、そして「はちみつ」には果糖やブドウ糖という単糖類が多く含まれています。いずれも小腸で消化・吸収されやすく、血液中に取り込まれやすいという性質があるため、エネルギー源として速やかに利用されます。その反面、血糖値やカロリーが気になる方は、過剰摂取に注意が必要です。
一方のオリゴ糖(特に難消化性オリゴ糖)は、小腸でほとんど吸収されずに大腸まで届きます。血糖値への影響が少なく、カロリーも砂糖やはちみつよりおよそ半分ほどとされています。そのため、血糖値やカロリー制限を意識している方が、砂糖の代わりにオリゴ糖を取り入れるケースも増えています。
オリゴ糖の特徴と働き
オリゴ糖が注目される理由として、大きく3つの特徴が挙げられます。
■腸内の善玉菌をサポート
人が小腸で分解・吸収できない難消化性オリゴ糖は大腸までそのまま届き、ビフィズス菌や乳酸菌といった「善玉菌」のエサになります。善玉菌がオリゴ糖を分解すると短鎖脂肪酸が発生し、腸内を弱酸性に保つことで「悪玉菌」の増殖を抑制する環境を作ります。同時に、善玉菌が作り出す酪酸は、大腸のぜん動運動を活発にし、便通の改善に寄与すると言われています。
■血糖値やインスリンの上昇を抑えやすい
オリゴ糖は糖質でありながら消化・吸収されにくい特性を持つため、小腸で血糖に変わる量が非常に少ないのが特徴です。その結果、砂糖などに比べて食後の血糖値の上昇が抑えられ、血糖を細胞へ取り込むために必要なインスリンの分泌刺激も少なくてすみます。糖尿病患者さんや血糖値が気になる方にとっては、日常的な負担軽減につながる可能性があります。
■一般的な糖質よりエネルギー量が低い
糖質は1gあたり約3〜4kcalほどのエネルギー量がありますが、オリゴ糖の場合は1gあたり約2kcal程度です。カロリーを抑えたいとき、砂糖の代替として役立つのがオリゴ糖のメリットです。ただし「低カロリーだから摂りすぎていい」というわけではないため、適量を意識して使うことが大切です。
オリゴ糖は腸内環境を整える?
腸内環境を表すキーワードに「腸内フローラ」という言葉があります。大腸内には数百~数千種類の細菌が群れを成しており、その状態を「フローラ(お花畑)」にたとえているのです。腸内フローラは以下の3種類の菌によって成り立ちます。
– 善玉菌(ビフィズス菌、乳酸菌など)
– 悪玉菌(ウェルシュ菌など)
– 日和見菌(善玉菌・悪玉菌いずれか優勢なほうに傾きやすい)
身体にとってメリットが多い善玉菌を増やすためには、プロバイオティクスと呼ばれる「菌そのものを摂取」する方法、またはプレバイオティクスと呼ばれる「菌のエサを摂取」する方法があります。オリゴ糖はこのプレバイオティクスに該当し、腸内で善玉菌をサポートすることで「腸活」につながると考えられています。
また、腸は「第二の脳」とも呼ばれるほど、自律神経やメンタル面との関連が深いとされます。腸内フローラの乱れは便秘や下痢などの症状だけでなく、免疫機能の低下やアレルギー症状の悪化、さらにはメンタル面の不調にもつながりうると考えられています。
このような背景から、オリゴ糖を含む食品やサプリメントで腸内環境を整えることに注目が集まっているのです。
腸活で注目されるトクホのオリゴ糖
オリゴ糖は、その整腸作用や健康サポート効果が評価され、特定保健用食品(トクホ)として許可を受けているものもあります。トクホは、特定の保健機能を有する成分を含む食品について、国が有効性と安全性を審査し、認可する制度です。
オリゴ糖関連のトクホ商品には「おなかの調子を整える」という表示が認められているものが多く、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)などが含まれます。こうしたトクホのオリゴ糖を取り入れることで、より信頼感を持って腸内環境を整えるサポートができるかもしれません。
オリゴ糖の効率的な摂取方法
オリゴ糖を日々の生活に上手に取り入れる方法は、大きく分けて2つあります。
■1. オリゴ糖を多く含む食品を食べる
ごぼうやたまねぎ、にんにく、バナナ、大豆、はちみつなどはオリゴ糖を微量ながら含んでいます。特にごぼうやたまねぎは比較的多くのオリゴ糖(フラクトオリゴ糖など)を含むことで知られています。とはいえ、これらの食品だけで十分なオリゴ糖を摂取するのは難しい場合もあるため、日常的に使い続けやすい形を検討するのがおすすめです。
■2. 市販のオリゴ糖製品(オリゴ糖シロップなど)を利用する
スーパーなどで販売されているオリゴ糖シロップやオリゴ糖パウダーを活用するのも効率的です。こうした製品には1日10gを目安とした利用方法が記載されていることが多いので、その範囲で活用すると良いでしょう。
なお、オリゴ糖は熱や酸に比較的強い性質を持ちますが、加熱時間が長すぎると一部が別の糖に変化するケースがあります。したがって、加熱料理に使う場合は最後の工程で加えると、オリゴ糖の働きをできるだけ保てると言われています。
さらに、オリゴ糖を含む食品と食物繊維が豊富な食品や乳酸菌・ビフィズス菌を同時に摂ることで、腸内環境ケアをより高められる可能性があります。ヨーグルトにオリゴ糖をかける、野菜や果物といっしょにスムージーにするなど、組み合わせを工夫するのもおすすめです。
オリゴ糖の摂りすぎによる影響はある?
腸内の調子を良くするはずのオリゴ糖ですが、「大量摂取」には注意が必要です。オリゴ糖が持つ高浸透圧の性質によって、腸内に水分を集めすぎると下痢を引き起こすことがあります。
また、オリゴ糖の健康へのプラス効果は「多ければ多いほど得られる」わけではありません。適量の範囲内で継続的に摂取することが重要です。特にオリゴ糖を初めて使う場合、腸内細菌に慣れさせるためにも少量からスタートし、様子を見ながら量を調整すると良いでしょう。
お腹の調子が気になったらオリゴ糖の摂取を意識してみよう
便秘や下痢など、お腹の不調に悩む方は少なくありません。そうした場合、腸内環境を整える対策のひとつとしてオリゴ糖の活用を検討してみるのも良い方法です。
オリゴ糖には、「腸内の善玉菌を増やす」「血糖値を上げにくい」「虫歯になりにくいタイプもある」など、さまざまなメリットが報告されています。ただし一度に大量に摂るとお腹が緩くなってしまうこともあるため、適量を守りながら継続する意識が大切です。
特に、トクホのオリゴ糖製品は信頼性が高く、自分に合った商品を探してみることで、効率的に腸活を進めることができるでしょう。
まとめ
オリゴ糖は「少糖類」に分類される糖でありながら、消化・吸収されにくい性質を持つため、カロリーや血糖値を気にする方でも使いやすい甘味料として近年注目を集めています。腸内に届いて善玉菌のエサとなり、便通の改善や免疫機能のサポートなど、さまざまな健康メリットが期待できます。
ただし、オリゴ糖を含む食品でも種類や製品によって作用が異なり、過剰に摂取すると下痢や腹部膨満などのトラブルにつながる可能性があります。自分の体調を見ながら少しずつ摂取量を増やしていき、生活習慣の一部として無理なく継続するのが理想です。
血糖値への影響やカロリーが気になる方、また腸内環境を整えたい方は、ぜひオリゴ糖を上手に取り入れて健康維持に役立ててみてはいかがでしょうか。