ゴルフを愛するドライバーの皆さん、楽しいラウンドの後や練習の後に、肘の内側にズキッとした痛みを感じたことはありませんか?もしかしたら、それは「ゴルフ肘」かもしれません。ゴルフ肘は、ゴルファーだけでなく、日常生活や他のスポーツでも腕をよく使う方に起こりうる、身近な肘のトラブルの一つです。
そして、このゴルフ肘による肘の痛みは、単にゴルフのパフォーマンスを低下させるだけでなく、実は車の運転にも影響を及ぼす可能性があります。例えば、ハンドルを握る際に肘が痛んだり、長時間の運転で痛みが悪化したり、痛みのために集中力が散漫になったりすることも考えられます。快適なゴルフライフと安全なカーライフのためにも、ゴルフ肘について正しく理解し、適切な対処をすることが大切です。
この記事では、ゴルフ肘とは一体どのような状態なのか、なぜ起こるのか、どのような症状が現れるのか、そしてご自身でできる予防法や対処法、専門家への相談の重要性などについて、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。正しい知識を身につけてゴルフ肘を克服し、ゴルフも運転も思い切り楽しみましょう。
「ゴルフ肘」とは何か?正式名称と基本的な知識
まず、「ゴルフ肘」という言葉について、基本的なことを理解しておきましょう。
ゴルフ肘の定義
ゴルフ肘とは、肘の内側(小指側)に起こる痛みの総称です。ゴルフのスイング動作でこの部分に負担がかかりやすいために「ゴルフ肘」と呼ばれていますが、必ずしもゴルフをする人だけに起こるわけではありません。
正式名称:上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)
ゴルフ肘の医学的な正式名称は「上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)」と言います。
少し難しい名前ですが、分解して見てみましょう。
- 上腕骨(じょうわんこつ):肩から肘までの間の腕の骨(いわゆる二の腕の骨)のことです。
- 内側上顆(ないそくじょうか):肘の内側にある、骨の出っ張った部分です。ここには、手首を手のひら側に曲げる筋肉(手関節屈筋群:しゅかんせつくっきんぐん)や、前腕を内側にひねる(回内させる)筋肉(前腕回内筋群:ぜんわんかいないきんぐん)の腱(けん:筋肉と骨をつなぐ強靭な結合組織)がたくさん付着しています。
- 炎(えん):炎症が起きている状態を指します。
つまり、上腕骨内側上顆炎とは、肘の内側の骨の出っ張り(上腕骨内側上顆)に付着している腱やその周辺組織に、繰り返しの負担によって炎症が起こり、痛みが生じる状態なのです。
痛むメカニズム
手首を曲げたり、物を強く握ったり、腕を内側にひねったりする動作を繰り返すと、肘の内側上顆に付着している筋肉や腱に、引っ張られる力(牽引力)やこすれる力(摩擦力)が繰り返し加わります。この負荷が過度になると、腱の付着部で微細な損傷や炎症が起こり、痛みとして感じられるようになります。これがゴルフ肘の痛みのメカニズムです。
ゴルフ以外の原因
前述の通り、ゴルフ肘はゴルフ特有のものではありません。以下のような動作でも起こり得ます。
- テニス:フォアハンドストロークで手首をこねるように打つ場合。
- 野球:投球動作(特にピッチャーやキャッチャー)。
- ボーリング、やり投げなどの投擲(とうてき)競技。
- 日常生活での手首や腕の使いすぎ:
- 重いフライパンを振る、包丁で硬いものを切るなどの料理動作。
- 雑巾やタオルを強く絞る動作。
- ドライバーやレンチなどの工具を使う作業。
- 重い荷物を繰り返し運ぶ作業。
- パソコンのキーボードやマウスの長時間操作(まれに)。
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)との違い
肘の痛みでよく聞かれるものに「テニス肘」がありますが、これはゴルフ肘とは痛む場所が異なります。
- ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎):肘の内側の痛み。
- テニス肘(上腕骨外側上顆炎):肘の外側(親指側)の痛み。手首を甲側に反らせる筋肉(伸筋群)の腱の付着部の炎症です。
どちらも使いすぎによる腱の炎症ですが、負担のかかる筋肉や動作が異なるため、痛む場所が違うのです。
ゴルフ肘の代表的な症状
ゴルフ肘になると、以下のような症状が現れやすくなります。
- 肘の内側の痛み:これが最も特徴的な症状です。具体的には、以下のような動作で痛みを感じたり、痛みが強くなったりします。
- ゴルフのスイング時(特にダウンスイングからインパクト、フォロースルーにかけて)
- ボールを打った瞬間や、地面を叩いてしまった時(ダフった時)
- 物を掴んで持ち上げようとする時(例:カバン、やかん、フライパンなど)
- タオルや雑巾を絞る時
- ドアノブを回す時
- 瓶のフタを開ける時
- 手首を手のひら側に曲げる(屈曲させる)時
- 前腕を内側にひねる(回内させる)時
- 肘の内側を押すと痛む(圧痛): 肘の内側の骨の出っ張り(上腕骨内側上顆)の少し下あたりを押すと、ピンポイントで強い痛みを感じます。
- 痛みが前腕の内側や手首に広がる(放散痛): 症状が進行すると、肘の内側だけでなく、そこから手首にかけての前腕の内側の筋肉に沿って痛みが広がることがあります。
- 握力の低下: 痛みのために、物を強く握れなくなったり、握力が弱くなったように感じたりすることがあります。
- 肘の曲げ伸ばしでの違和感や軽い痛み: 日常生活での何気ない肘の動きでも、違和感や軽い痛みを感じることがあります。
- 症状の進行: 初期の段階では、ゴルフや特定の作業をした後にだけ痛みを感じ、休むと治まることが多いです。しかし、症状が進行すると、運動中にも常に痛みを感じるようになり、さらに悪化すると、安静にしていてもズキズキとした痛みが続いたり、日常生活の些細な動作でも痛みが出たりするようになります。
これらの症状に心当たりがある場合は、ゴルフ肘の可能性があります。
なぜゴルフ肘になってしまうのか?主な原因
ゴルフ肘は、様々な要因が複合的に絡み合って発生します。主な原因を理解しておくことは、予防や改善に繋がります。
1. ゴルフスイングの問題
ゴルフというスポーツの特性上、スイング動作が原因となることが多いです。
- 不適切なフォーム:
- 手打ち:体幹(胴体)をうまく使えず、腕や手先の力に頼ったスイングをしていると、肘への負担が非常に大きくなります。
- インパクトで手首をこねるような動きや、過度に手首を使いすぎるスイング。
- フォロースルーで**左肘が引けてしまう(チキンウィング)**と、右肘(右打ちの場合)の内側に負担がかかりやすくなります。
- トップで右肘が体から離れすぎる(フライングエルボー)。
- インパクト時に肘が伸びきってしまう。
- ダフり(地面を叩く)の繰り返し: ボールの手前の地面をクラブヘッドで叩いてしまう「ダフり」は、地面からの強い衝撃がクラブを通じて肘に伝わり、大きな負担となります。
- 打ちっ放しでの過度な練習: 特に、硬い人工マットの上で大量のボールを打ち続けると、マットからの衝撃が肘に繰り返し伝わり、ゴルフ肘のリスクを高めます。
- 重すぎるクラブ、硬すぎるシャフトの使用: 自分の体力やスイングスピードに合わない、重すぎるクラブや硬すぎるシャフトのクラブを使っていると、スイング中に余計な力が入り、肘への負担が増します。
- グリップの握りすぎ: クラブを強く握りすぎると、前腕の筋肉が常に緊張した状態になり、肘の腱への負担が大きくなります。
2. 日常生活や他のスポーツでの腕の使いすぎ(オーバーユース)
ゴルフ以外の場面でも、手首や腕を繰り返し使う動作は、ゴルフ肘の原因となり得ます。
- 仕事での反復作業:パソコンのキーボードやマウスの長時間操作、重い物を持つ運搬作業、工具を使う大工仕事、調理師の包丁さばきやフライパンを振る動作など。
- 他のスポーツ:野球の投球動作、テニスのサーブやフォアハンドストローク、ボーリング、やり投げ、ハンマー投げなど、手首や肘を繰り返し使うスポーツ。
- 家事:雑巾やタオルを強く絞る、重い鍋を持つ、掃除機をかけるなど。
3. 筋力不足・柔軟性不足
体の状態も、ゴルフ肘の発生に大きく関わっています。
- 前腕の筋肉(屈筋群、回内筋群)の筋力不足:肘の内側上顆に付着するこれらの筋肉が弱いと、スイング時の衝撃や繰り返し動作による負荷に耐えきれず、腱が損傷しやすくなります。
- 手首や肘、肩関節の柔軟性不足:これらの関節の動きが硬いと、スイングの際に無理な力がかかりやすくなり、肘への負担が増します。
- 体幹の筋力不足:体幹が弱いと、スイングが手打ちになりやすく、結果として肘に負担が集中します。
- 肩甲骨周りの筋肉の柔軟性不足や機能低下:肩甲骨の動きが悪いと、腕の動きもスムーズでなくなり、肘に余計なストレスがかかります。
4. ウォーミングアップ不足・クールダウン不足
- ウォーミングアップ不足:ゴルフのプレー前や練習前に、手首、肘、肩、体幹などを十分に温めず、筋肉や腱が硬い状態で急にスイングを始めると、組織が損傷しやすくなります。
- クールダウン不足:プレー後や練習後に、使った筋肉(特に前腕の筋肉)をストレッチなどでケアしないと、筋肉の疲労が蓄積し、硬くなり、腱への負担が増したままになります。
5. 加齢による腱の変性
年齢とともに、腱のコラーゲン線維が変性し、弾力性が失われ、もろく傷つきやすくなる傾向があります。そのため、中高年以降になると、若い頃と同じような運動量でもゴルフ肘を発症しやすくなることがあります。
6. その他
- 間違ったトレーニング方法:急激に練習量を増やしたり、自己流の無理なトレーニングをしたりする。
- 疲労の蓄積:十分な休息を取らずに、疲れた状態でゴルフや作業を続ける。
- グリップの太さが合っていない:細すぎるグリップや太すぎるグリップは、余計な力みを生むことがあります。
これらの要因が一つ、あるいは複数絡み合って、ゴルフ肘が引き起こされるのです。
ゴルフ肘を予防するためにできること
ゴルフ肘は、適切な知識を持ち、日頃から予防策を講じることで、その多くを防ぐことができます。
1. 正しいゴルフスイングの習得
- 無理のない、体に負担の少ないフォームを身につけることが最も重要です。できれば、ゴルフスクールに通ったり、レッスンプロにスイングを見てもらったりして、専門的な指導を受けるのが理想的です。
- 体全体を使ったスイングを意識し、手先だけの力に頼らないようにしましょう。体幹の回転をうまく使い、下半身から上半身、そして腕へとスムーズに力を伝えることが大切です。
- インパクトで手首をこねすぎたり、不自然な使い方をしたりしないように注意しましょう。
- ダフりを減らすための練習も重要です。
2. 適切なクラブ選び
- 自分の体力やスイングスピード、技術レベルに合った、重すぎず、硬すぎないクラブを選びましょう。ショップの専門家やレッスンプロに相談して、自分に最適なクラブを見つけるのがおすすめです。
- グリップの太さも重要です。握った時に指が少し重なるくらいが目安と言われています。
3. 練習量のコントロール
- 一度に大量のボールを打ちすぎないようにしましょう。特に、硬い人工マットの上での練習は、肘への衝撃が大きいため注意が必要です。
- 練習の合間には適度に休息を取り、肘や腕を休ませる時間を作りましょう。
- 痛みや違和感を感じたら、無理せず練習を中断する勇気も大切です。
4. ウォーミングアップとクールダウンの徹底
- ウォーミングアップ(準備運動): ゴルフのプレー前や練習前には、必ず5~10分程度のウォーミングアップを行いましょう。軽いジョギングやウォーキングで体を温め、その後、手首、肘、肩、肩甲骨周り、体幹、股関節などを中心に、動的ストレッチ(関節を動かしながら筋肉を温め、柔軟性を高めるストレッチ)を行うのが効果的です。
- クールダウン(整理運動): プレー後や練習後も、5~10分程度のクールダウンを忘れずに行いましょう。軽いストレッチで、使った筋肉(特に前腕の手首を曲げる筋肉群)をゆっくりと伸ばし、疲労回復を促します。
5. 筋力トレーニングとストレッチ
ゴルフ肘の予防には、関連する筋肉の強化と柔軟性の向上が不可欠です。
- 前腕の筋肉強化:
- リストカール:手のひらを上にしてダンベル(またはペットボトルなど)を持ち、手首をゆっくりと上に曲げます。
- リバースリストカール:手の甲を上にしてダンベルを持ち、手首をゆっくりと上に反らせます。
- 前腕回内・回外運動:ダンベルなどを持ち、肘を90度に曲げた状態で、前腕を内側(手のひらを下に向ける)と外側(手のひらを上に向ける)にゆっくりとひねります。 これらの運動は、軽い負荷で、ゆっくりとした動作で、回数を多く行うのがポイントです。
- 握力強化:ハンドグリップやテニスボールなどを握る運動も効果的です。
- 体幹トレーニング:プランク、サイドプランク、バードドッグなどで、体幹を安定させ、手打ちを防ぎます。
- 肩甲骨周りのストレッチ・トレーニング:肩甲骨の動きをスムーズにし、肩や腕への負担を軽減します。
- 手首・肘・肩の柔軟性を高めるストレッチ:各関節を様々な方向にゆっくりと伸ばし、可動域を広げましょう。
6. サポーターやテーピングの活用
- 肘への負担を軽減するゴルフ肘専用のサポーター(エルボーバンドなど)や、筋肉の動きを助けるキネシオロジーテープなどを、予防的に使用するのも有効な手段です。ただし、これらは根本的な解決策ではないため、頼りすぎず、上記の他の予防策と併用することが大切です。
7. 日常生活での注意
- 重い物を持つ際は、片手だけでなく両手で持ったり、肘だけでなく体全体で持つように意識したりしましょう。
- 手首や腕を酷使する作業(パソコン作業、家事など)では、こまめに休憩を取り、ストレッチなどを行うようにしましょう。
8. 自分の体の声を聞く
- これが最も重要なことかもしれません。肘に少しでも違和感や軽い痛みを感じたら、「これくらい大丈夫だろう」と放置せず、無理をせずに休息を取り、早めに対処するようにしましょう。初期の段階であれば、安静にするだけで改善することも少なくありません。
これらの予防策を日頃から意識して実践することで、ゴルフ肘の発症リスクを大幅に減らすことができます。
ゴルフ肘になってしまったら?初期対応と治療法
予防策を講じていても、残念ながらゴルフ肘になってしまうこともあります。その場合は、できるだけ早く適切な対応をすることが、早期回復への鍵となります。
初期対応(RICE処置を参考に)
肘に痛みを感じ始めたら、まずは応急処置として「RICE処置」の原則を参考に、以下の対応を行いましょう。
- Rest(安静):痛みの原因となっている動作(ゴルフの練習やプレー、手首を使う作業など)を直ちに中止し、肘をできるだけ動かさないように安静にします。
- Ice(冷却):炎症や腫れを抑えるために、氷をビニール袋に入れ少量の水を加えた氷のうや、アイスパック、保冷剤などをタオルで包み、痛む部分(肘の内側)に15~20分程度当てて冷やします。これを1日に数回繰り返します。ただし、冷やしすぎによる凍傷には注意が必要です。この冷却は、主に炎症が強い急性期(痛み始めてから2~3日程度)に行います。
- Compression(圧迫):ゴルフ肘用のサポーターや弾性包帯などで、肘の内側を軽く圧迫することで、腫れを抑えたり、腱への負担を軽減したりする効果が期待できます。ただし、強く締め付けすぎると血行が悪くなるため、注意が必要です。
- Elevation(挙上):可能であれば、肘を心臓より高い位置に保つことで、腫れを軽減するのに役立ちます。
RICE処置は、あくまで応急処置であり、これだけで治るわけではありません。
医療機関(整形外科など)の受診
以下のような場合は、自己判断せずに、必ず整形外科などの医療機関を受診し、医師の正確な診断を受けてください。
- 痛みが非常に強い、または我慢できない場合
- RICE処置をしても、数日経っても痛みが改善しない、または悪化する場合
- 肘を動かさなくてもズキズキと痛む場合
- 日常生活(物を掴む、ドアノブを回すなど)にも支障が出るほどの痛みがある場合
- 肘の周辺に腫れや熱感がある場合
- 腕や手にしびれがある場合
医師は、問診(いつから、どのように痛むか、ゴルフ歴、仕事内容など)、視診(腫れや変形の有無など)、触診(痛む場所の確認など)に加え、必要に応じてレントゲン検査(骨に異常がないか確認するため)、超音波検査(エコー検査:腱や筋肉の状態をリアルタイムで確認するため)、まれにMRI検査などを行い、ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)であるか、あるいは他の疾患(例えば、肘部管症候群などの神経障害、変形性肘関節症、靭帯損傷など)の可能性はないかなどを診断します。
その診断に基づいて、以下のような治療が行われます。
- 薬物療法:
- 痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDsなど)の内服薬や、湿布、塗り薬(消炎鎮痛成分配合)などが処方され、炎症と痛みを抑えます。
- 注射療法: 痛みが非常に強い場合や、保存的治療でなかなか改善しない場合に、炎症を起こしている腱の付着部やその周辺に、局所麻酔薬やステロイド剤などを注射する治療法です。ステロイド注射は効果が高い反面、繰り返し行うと腱を弱くするリスクもあるため、医師の慎重な判断のもとで行われます。
- 物理療法: 医療機関のリハビリテーション科や、提携する施設などで、以下のような物理療法が行われることがあります。
- 温熱療法:ホットパックや赤外線、マイクロ波などで患部やその周辺を温め、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減します(急性期を過ぎてから行われることが多い)。
- 電気治療:低周波治療、干渉波治療、TENS(経皮的電気神経刺激)などで、痛みの緩和、血行促進、筋弛緩などを図ります。
- 超音波治療:高周波数の音波の振動を利用して、体の深部を温めたり(温熱効果)、微細なマッサージ効果を与えたり(ミクロマッサージ効果)することで、組織の修復を促したり、痛みを和らげたりします。
- レーザー治療なども、痛みの緩和や炎症の抑制を目的として用いられることがあります。
- 装具療法: ゴルフ肘専用のバンド(エルボーバンド)やサポーターを処方されることがあります。これらは、前腕の筋肉の付け根にかかる負担を軽減し、痛みを和らげる効果が期待できます。
- リハビリテーション: 理学療法士や作業療法士の指導のもと、痛みが落ち着いてきたら、以下のようなリハビリテーションを行います。
- ストレッチ:硬くなった前腕の筋肉(手首を曲げる筋肉群)や、手首、肘、肩関節の柔軟性を高めるためのストレッチ。
- 筋力トレーニング:弱っている前腕の筋肉や、手首、肩甲骨周りの筋肉などを、徐々に強化していくトレーニング。
- 運動療法:肘に負担のかからない正しい体の使い方や、ゴルフスイングのフォーム修正なども含めた運動指導。
- 手術: 上記の保存的治療(手術以外の治療)を長期間(通常6ヶ月~1年以上)続けても症状が改善せず、日常生活や仕事に大きな支障がある場合には、まれに手術が検討されることもあります。手術では、炎症を起こしている腱の悪い部分を切除したり、神経の圧迫を取り除いたりします。
整骨院・接骨院での施術
整骨院や接骨院(柔道整復師が施術を行う場所)でも、ゴルフ肘の症状に対するケアを受けることができます。ただし、必ず最初に医療機関(整形外科など)を受診し、医師の診断と指示(同意)のもとで施術を受けることが原則です。特に、痛みが強い場合や、他の疾患の可能性が否定できない場合は、自己判断で整骨院だけにかかるのは避けましょう。
医師との連携のもと、整骨院・接骨院では主に以下のようなアプローチでゴルフ肘の改善を目指します。
- 手技療法: マッサージ、ストレッチ、関節モビライゼーション(関節の動きを良くする手技)、筋膜リリース(筋肉を包む膜の癒着を剥がす手技)、トリガーポイント療法(痛みの引き金となる筋肉の硬結にアプローチする手技)など、施術者の手による様々な技術を用いて、炎症を起こしている腱の付着部や、硬くなった前腕の筋肉の緊張を和らげ、血行を促進し、肘関節や手首関節の可動域を改善し、痛みを軽減します。
- 物理療法: 電気治療器(低周波、干渉波、ハイボルテージ、マイクロカレント、EMSなど)、超音波治療器、温熱療法機器、冷却療法機器などを用いて、痛みの緩和、炎症の抑制、組織の修復促進、筋力強化のサポートなどを行います。
- 運動療法・リハビリテーション指導: 症状の回復段階に合わせて、自宅でできる効果的なストレッチやエクササイズ、肘に負担のかからない正しい体の使い方、ゴルフスイングのフォームに関するアドバイス(専門的なコーチングとは異なります)、再発予防のためのトレーニング指導などを行います。
- テーピング療法: 伸縮性テープ(キネシオロジーテープなど)や非伸縮性テープ(ホワイトテープなど)を用いて、患部を保護・サポートしたり、筋肉の動きを助けたり、痛みを軽減したりします。
整骨院・接骨院のメリットとしては、手技療法を中心としたきめ細やかなアプローチや、日常生活のアドバイス、セルフケア指導などが受けられる点、そして比較的通いやすい点などが挙げられます。
ゴルフ肘の治療期間と注意点
- 治療期間: ゴルフ肘の治療にかかる期間は、症状の重症度、発症からの期間、年齢、治療への取り組み方、そして日常生活やゴルフの頻度などによって大きく異なります。軽いものであれば数週間で改善することもありますが、一般的には数週間~3ヶ月程度、症状が慢性化していたり、重症だったりする場合は、半年以上かかることもあります。
- 焦らず、専門家の指示に従い、根気強く治療とリハビリに取り組むことが大切です。
- 痛みが軽減しても、自己判断で急にゴルフや負担のかかる作業を再開しないようにしましょう。必ず医師やセラピストの許可を得て、ウォーミングアップを入念に行い、徐々に負荷を上げていくなど、段階的な復帰を心がけてください。無理をすると、再発のリスクが高まります。
- 再発予防のために、なぜゴルフ肘になったのか、根本的な原因(スイングフォームの問題、筋力不足、柔軟性不足、不適切なクラブ、練習量の過多など)を見直し、改善していくことが非常に重要です。
- 日常生活でも、肘に負担をかけないように、重い物を持つ時の持ち方や、手首を使う作業の仕方などを工夫しましょう。
ゴルフ肘に対する一般的な整骨院のアプローチ(茨木市・高槻市の地域性を考慮して)
(※特定の整骨院名を出す指示がないため、ここでは一般的な整骨院のアプローチとして記述し、茨木市・高槻市という地域性は文脈に含めます)
大阪府の茨木市や高槻市といった地域には、ゴルフ愛好家も多く、ゴルフ肘をはじめとするスポーツ障害の治療やケアに力を入れている整骨院も少なくありません。そのような整骨院では、一般的に以下のようなアプローチでゴルファーのサポートを行っています。
- ゴルフ肘に特化した専門知識と豊富な施術経験: ゴルフスイングのメカニズムや、ゴルフ肘が起こりやすい体の使い方、そして効果的な治療法や予防法に関する専門知識を持ち、多くのゴルファーの施術経験があるスタッフが対応します。
- 詳細なカウンセリングと動作分析による根本原因の特定: 単に肘の痛む場所だけでなく、ゴルフのスイングフォーム、体の使い方、筋力バランス、柔軟性、使用しているクラブ、練習頻度などを詳細に聞き取り、分析することで、なぜゴルフ肘になったのかという根本的な原因を突き止めます。
- 手技療法、物理療法、運動療法を組み合わせたオーダーメイドの施術: 一人ひとりの症状や原因、目標(痛みをなくしたい、早くゴルフに復帰したい、再発を防ぎたいなど)に合わせて、マッサージやストレッチ、関節調整といった手技療法、最新の電気治療器や超音波治療器などを用いた物理療法、そして再発予防とパフォーマンス向上のための運動療法を効果的に組み合わせた、オーダーメイドの施術プランを提供します。
- 正しいスイングフォームへのアドバイスや、肘に負担の少ない体の使い方の指導: 施術だけでなく、ゴルフ肘を再発させないために、肘に負担のかかりにくいスイングフォームのポイントや、日常生活での正しい体の使い方などについてもアドバイスします(ただし、本格的なスイングコーチングは専門外です)。
- 再発予防のためのセルフケア指導とトレーニングプランの提案: 自宅でできる効果的なストレッチやエクササイズ、ウォーミングアップやクールダウンの方法、適切な練習量の管理など、患者さん自身が積極的に取り組めるセルフケア方法を具体的に指導し、長期的なサポートを行います。
- 地域のゴルファーのサポート: 地域のゴルフ練習場やゴルフ関連団体と連携したり、ゴルファー向けのセミナーやコンディショニング指導を行ったりするなど、地域のゴルファーコミュニティの健康増進に貢献している整骨院もあります。
もしあなたが茨木市や高槻市、またその近隣にお住まいで、ゴルフによる肘の痛みや不調にお悩みでしたら、ゴルフ肘の治療に詳しい整骨院に一度相談してみることをお勧めします。
まとめ
今回は、「ゴルフ肘とは?」というテーマでお届けしました。
- ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)は、肘の内側に起こる痛みで、ゴルフのスイングだけでなく、日常生活での腕の使いすぎでも発症する可能性があります。
- 主な原因は、不適切なフォーム、オーバーユース、筋力不足、柔軟性不足など、様々な要因が複合的に絡み合っています。
- 予防のためには、正しいスイングの習得、適切なクラブ選び、練習量のコントロール、ウォーミングアップ・クールダウンの徹底、そして日頃からの筋力トレーニングとストレッチが重要です。
- ゴルフ肘になってしまったら、無理せず安静にし、早期に専門家(整形外科、ゴルフ肘に詳しい整骨院など)に相談し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
- 治療は、薬物療法、物理療法、運動療法(リハビリ)、手技療法などが組み合わせて行われ、焦らず根気強く取り組むことが回復への鍵となります。
ゴルフ肘は、つらい痛みでゴルフを楽しむことを妨げるだけでなく、日常生活や運転にも影響を及ぼすことがあります。しかし、適切な知識を持ち、正しいケアと予防を行うことで、必ず改善し、再び快適にゴルフや日常生活を送ることができるようになります。
肘のケアをしっかり行い、ゴルフも、そして安全で快適なカーライフも、思う存分楽しんでいきましょう。