胸郭出口症候群とは?
胸郭出口症候群とは、首と肩の間にある「胸郭出口」と呼ばれる部分で、腕や肩、首への神経や血管が圧迫されることで起こる症状の総称です。
具体的には、鎖骨と第一肋骨の間や、首の筋肉と鎖骨の間など、いくつかの場所で神経や血管が圧迫される可能性があります。
この圧迫によって、腕や手にしびれや痛み、冷感、脱力感などの症状が現れます。
日常生活で腕を長時間使う人や、猫背気味の人、重い荷物を持つ仕事をしている人などは、特に注意が必要です。
胸郭出口症候群の原因
胸郭出口症候群の原因は、大きく分けて以下の3つに分けられます。
1. 筋肉や骨格の異常
- 姿勢の悪さ(猫背など): 猫背になると、首や肩の筋肉が緊張し、神経や血管を圧迫しやすくなります。
- 首や肩の筋肉の緊張: 長時間同じ体勢でいることや、ストレスなどによって首や肩の筋肉が緊張すると、神経や血管が圧迫されることがあります。
- 骨格の異常: 先天的な骨格の異常や、外傷によって骨が変形してしまうと、神経や血管が圧迫される可能性があります。
- 第一肋骨や鎖骨の異常: 第一肋骨や鎖骨に異常がある場合、神経や血管を圧迫しやすくなります。
2. 繰り返しの動作
- 同じ体勢での作業: パソコン作業や、工場でのライン作業など、同じ体勢での作業を長時間続けると、首や肩の筋肉が緊張し、神経や血管を圧迫しやすくなります。
- 重い物の持ち運び: 重い物を頻繁に持ち運ぶ作業は、首や肩に負担がかかり、神経や血管を圧迫する可能性があります。
- スポーツ: 野球やバレーボールなど、腕を大きく使うスポーツをしていると、肩や首の筋肉に負担がかかり、神経や血管を圧迫することがあります。
3. その他
- 外傷: 交通事故やスポーツ中のケガなどで、首や肩を強く打つと、神経や血管が損傷したり、周辺の組織が腫れて神経や血管を圧迫したりすることがあります。
- 妊娠: 妊娠によって、ホルモンバランスの変化や体重増加により、首や肩の筋肉が緊張しやすくなり、神経や血管が圧迫されることがあります。
これらの原因が単独で起こる場合もあれば、複数の原因が複合的に作用して胸郭出口症候群を引き起こす場合もあります。
胸郭出口症候群の症状
胸郭出口症候群の症状は、神経や血管がどの程度圧迫されているかによって異なります。
主な症状としては、以下のものがあります。
1. 腕や手のしびれ・痛み
- 腕や手の痺れは、最も多くみられる症状の一つです。
- 親指、人差し指、中指などに痺れが出やすいです。
- 痛みは、腕全体や肩、首に広がることもあります。
- 夜間や朝方に症状が悪化する傾向があります。
2. 腕の脱力感・筋力低下
- 腕や手の筋力が低下し、物を持ち上げたり、細かい作業がしづらくなることがあります。
- 重い物を持ち上げると、腕が痺れたり、痛んだりすることがあります。
3. 手の冷感・蒼白
- 腕や手が冷たく感じたり、色が白っぽくなったりすることがあります。
- 血行が悪くなっているサインです。
4. 頭痛・めまい
- 首や肩の筋肉の緊張が原因で、頭痛やめまいが起こることがあります。
5. 呼吸困難
- 肋骨と鎖骨の間の神経や血管が圧迫されると、呼吸が苦しくなることがあります。
6. その他
- 指先の痺れや感覚の異常
- 握力の低下
- 上肢の腫れ
- 肩こり
- 首の痛み
- 吐き気
- 疲労感
これらの症状は、徐々に現れる場合もあれば、急に現れる場合もあります。
胸郭出口症候群の診断
胸郭出口症候群の診断は、問診、身体診察、画像検査などによって行われます。
1. 問診
医師は、症状が現れた時期や経過、日常生活での状況などについて詳しく質問します。
2. 身体診察
医師は、首や肩の筋肉の状態、腕の痺れや痛みの程度、血管や神経の圧迫の有無などを確認します。
アレンテストやアドラソンテストなどの検査を行い、症状をより詳しく確認する場合もあります。
3. 画像検査
- レントゲン検査: 骨の異常や変形がないかを確認します。
- MRI検査: 神経や血管の圧迫の程度や、周囲の組織の状態を確認します。
- 神経伝導速度検査: 神経の伝達速度を測定し、神経の圧迫の程度を確認します。
- 血管造影: 血管の異常や狭窄がないかを確認します。
これらの検査結果を総合的に判断して、胸郭出口症候群と診断されます。
胸郭出口症候群の治療法
胸郭出口症候群の治療法は、症状の程度や原因によって異なります。
1. 保存療法
保存療法は、薬物療法や理学療法など、手術をせずに症状を改善する方法です。
- 薬物療法: 痛みや炎症を抑える薬(鎮痛剤や消炎剤)や、神経の圧迫を軽減する薬などが用いられます。
- 理学療法: ストレッチやマッサージ、運動療法などを行い、筋肉の緊張を和らげ、血行を改善します。
- 装具: 首や肩を支える装具を使用することで、神経や血管への圧迫を軽減します。
- 生活習慣の改善: 猫背などの姿勢の悪さを改善したり、重い物の持ち運びを控えるなど、症状を悪化させる要因を避けることが大切です。
2. 手術療法
保存療法で症状が改善しない場合や、神経や血管の圧迫が強い場合は、手術が必要となることがあります。
手術では、神経や血管を圧迫している筋肉や骨を切除したり、神経や血管の周りのスペースを広げたりします。
胸郭出口症候群の予防
胸郭出口症候群は、予防することが大切です。
- 正しい姿勢を保つ: 猫背にならないように、背筋を伸ばして座ったり歩いたりしましょう。
- 肩や首の筋肉をストレッチする: デスクワークなどで長時間同じ体勢になる場合は、こまめに肩や首をストレッチしましょう。
- 重い物の持ち運びを避ける: 重い物を持ち運ぶ際は、できるだけ体全体を使って持ち上げ、首や肩に負担をかけないようにしましょう。
- 同じ体勢での作業を避ける: 長時間同じ体勢での作業は避け、こまめに休憩を取りましょう。
- 運動不足を解消する: 適度な運動をすることで、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進することができます。
- ストレスを溜めない: ストレスは、筋肉の緊張を高める原因となります。ストレスを溜めないように、リラックスできる時間を作りましょう。
胸郭出口症候群に関するQ&A
Q. 胸郭出口症候群は治る病気ですか?
A. 胸郭出口症候群は、適切な治療を受ければ、多くの場合、症状が改善します。
しかし、症状が重い場合や、手術が必要となる場合もあります。
Q. 胸郭出口症候群はどんな人に多いですか?
A. 胸郭出口症候群は、女性に多くみられます。
また、若い年齢層や、同じ体勢での作業が多い人、重い物を持ち運ぶ仕事をしている人などに多くみられます。
Q. 胸郭出口症候群と似た病気はありますか?
A. 胸郭出口症候群と似た病気には、頸椎椎間板ヘルニアや、腕神経叢損傷などがあります。
これらの病気との鑑別診断が必要となる場合があります。
Q. 胸郭出口症候群は放置するとどうなるのでしょうか?
A. 胸郭出口症候群を放置すると、神経や血管の圧迫が強くなり、症状が悪化する可能性があります。
また、手の機能障害や、日常生活に支障をきたす可能性もあります。
まとめ
胸郭出口症候群は、首と肩の間で神経や血管が圧迫されることで起こる病気です。
腕や手にしびれや痛み、冷感、脱力感などの症状が現れます。
原因は、姿勢の悪さ、繰り返しの動作、外傷など様々です。
症状が気になる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
早期に治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、日常生活を快適に送ることができるようになります。
当院では、胸郭出口症候群でお悩みの方に対し、症状に合わせた適切な施術を行います。お一人で悩まず、お気軽にLINEでご相談ください。