「末端冷え性」とは、体温自体は低いわけではないのに、手先や足先だけが冷たく感じてしまう症状のことです。特に若い女性に多く見られる冷え性の一種で、本人はつらい冷えを感じているのに、周りの人には理解されにくいこともあります。
しかし、その冷えは日常生活に大きな影響を与えることも。足が冷たくてなかなか眠りにつけなかったり、夜中に手足の冷えで何度も目が覚めてしまったりと、睡眠不足につながることも少なくありません。睡眠の質が低下すると、体調不良を引き起こす原因にもなりかねないため、早めの対策が大切です。
なぜ?末端冷え性が起こるメカニズム
末端冷え性の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられています。その中でも特に多いのが、自律神経の乱れによるものです。
自律神経は、私たちの意志とは無関係に、呼吸や体温調節など、生きていくために必要な機能をコントロールしている神経です。ストレスや不規則な生活などによって自律神経のバランスが崩れると、特に交感神経が過剰に優位な状態になることがあります。
交感神経が優位になると、血管が収縮しやすくなり、血液の流れが悪くなります。血液は、体の隅々まで熱を運ぶ役割を担っているため、血行が悪くなると、熱が手先や足先といった末端まで届きにくくなってしまうのです。緊張した時に手が冷たくなるのは、まさにこのメカニズムが働いているからです。
気づいていない?末端冷え性の意外な原因と対策
体温が低いわけではないため、「自分は冷え性ではない」と思っている人もいるかもしれません。しかし、手足の先だけが冷えるという症状は、まさに末端冷え性のサインです。自覚がないからこそ、薄着をしたり、体を冷やすような生活習慣を続けたりしてしまい、症状を悪化させてしまうこともあります。
知らず知らずのうちに体を冷やしている可能性
例えば、首回りが大きく開いたトップスや、短いスカートなどを好んで着ている場合、自律神経の乱れによって手足に熱を運べない体は、露出した部分からどんどん冷えてしまいます。まずは、自分が冷えていることを自覚し、**「首」「手首」「足首」**といった、太い血管が皮膚の近くを通っている「3つの首」を意識的に温めることが重要です。これらの部分を温めるだけでも、末端冷え性の改善につながることが多くあります。
「気の巡り」を整えることも大切
東洋医学的な考え方では、エネルギーである「気」が体の隅々までスムーズに巡ることが健康の基本とされています。末端冷え性の中には、この「気の巡り」が滞ることで、体の部分的な冷えとして現れるタイプもあります。このような場合は、ストレッチで体を動かしたり、スーッとする香りのアロマを嗅いだり、レモン系のハーブティーを飲んだりすることで、気の巡りを改善し、冷えを和らげることができます。
特に、レモンバームやレモンバーベナなどのハーブティーは、リフレッシュ効果だけでなく、心身を温める効果も期待できるため、日々の生活に取り入れてみるのがおすすめです。また、レモンやグレープフルーツなどの精油を希釈してルームフレグランスとして使うのも、手軽に気分転換ができ、気の巡りをサポートしてくれます。
ストレスが原因?タイプ別の末端冷え性対策
末端冷え性の原因が、過度なストレスや精神的な緊張による自律神経の乱れである場合は、ただ「気の巡り」を良くするだけでは、なかなか症状の改善は見込めません。このタイプの末端冷え性には、リラックスして副交感神経を優位にすることが何よりも重要になります。
副交感神経を優位にするための、具体的な末端冷え性対策をいくつかご紹介しましょう。
規則正しい生活を送る
不規則な生活は、体内時計を狂わせ、自律神経のバランスを大きく乱す原因となります。毎日決まった時間に寝起きし、食事を摂るなど、規則正しいリズムで生活を送ることで、体内時計が整い、自律神経の働きも安定しやすくなります。
特に、朝起きたらすぐに太陽の光を浴びることは、体内時計をリセットする上で非常に重要です。また、朝食を起床後1時間以内に摂ることで、体内時計のメリハリがさらに高まり、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。
3つの首を温める
冷え対策の基本中の基本ですが、やはり**「首」「手首」「足首」の3つの首を冷やさない**ことが大切です。これらの部分は皮膚の近くに太い血管が通っているため、温めることで全身の血行を効率的に促進することができます。
- 首: ネックウォーマー、タートルネックのセーター、マフラー、ストールなどを活用しましょう。
- 手首: 手袋やアームウォーマーを着用し、袖の短いトップスはできるだけ避けましょう。
- 足首: レッグウォーマーがおすすめです。外出時はもちろん、室内でも積極的に着用しましょう。
入浴とストレッチで全身を温める
一日の終わりには、湯船にゆっくり浸かる習慣を取り入れましょう。秋冬は41~42℃、春夏は40~41℃程度の少しぬるめのお湯に、まずは胸まで5分、次に首まで5分浸かるのがおすすめです。冬場は、お湯に浸かっていない部分が冷えないように、シャワーの蒸気や浴室暖房などを利用して、浴室全体を温めておくとより効果的です。
また、入浴中に肩や首を優しくマッサージするのも血行促進に繋がります。さらに、ストレッチで全身の筋肉をほぐすことも、血液の循環を良くするために非常に有効です。毎日継続することで、冷えにくい体へと導くことができます。
手軽にできる!ハーブとアロマを活用した末端冷え性セルフケア
ストレスが原因の末端冷え性には、意識的にリラックスできる時間を作ることが不可欠です。アロマオイルやハーブは、心身のリラックスを促し、末端の血行を改善する効果が期待できるため、セルフケアに積極的に取り入れましょう。
セルフケア1:アロマバスで心身をリラックス
アロマバスは、精油(エッセンシャルオイル)やハーブの抽出液を浴槽に入れて入浴する方法です。温かいお湯と心地よい香りの相乗効果で、心身の緊張がほぐれ、全身の血行が促進されます。疲労回復だけでなく、精神的なストレスの緩和にも効果的です。
入浴前に、浴槽に張ったお湯に精油を3~5滴落とし、よく混ぜ合わせます。リラックス効果を高めるためには、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かることがポイントです。精油は蒸気によって香りが強く感じられるため、入れすぎには注意しましょう。
アロマバスにおすすめの精油は、ラベンダーやゼラニウムなど、鎮静効果のあるものです。また、スイートオレンジなどの柑橘系の香りは、血管拡張効果が高く、体を温めるのに適しています。
セルフケア2:ハーブティーでホッと一息
リラックスタイムには、鎮静作用のあるハーブティーを飲むのがおすすめです。特に、日常的にストレスを感じやすい方は、カフェインの入った飲み物の代わりに、好みの風味のハーブティーを取り入れてみましょう。
- ジャーマンカモミール: 心を落ち着かせ、安眠を促す効果が期待できます。
- リンデンフラワー: 穏やかな甘い香りで、緊張を和らげるのに役立ちます。
- パッションフラワー: 不安やイライラを鎮め、リラックス効果を高めます。
- ジンジャーシナモンティー: 紅茶に薄切りにした生姜や乾燥生姜を浸し、はちみつやシナモンを加えたものは、体の芯から温まり、冷え対策に効果的です。
セルフケア3:食事に香味野菜を取り入れる
体内で作られる熱の約6割は、筋肉の活動によるものです。そのため、筋肉を作るために欠かせないタンパク質をしっかりと摂ることが、冷えにくい体を作る上で重要になります。タンパク質を含む食品と一緒に、スパイスや薬味などの香味野菜を摂るのがおすすめです。
**シソやシャンツァイ(香菜)**は、気の巡りを良くし、体を温める効果がある代表的な香味野菜です。日々の料理に積極的に取り入れることで、手足の冷えの改善に繋げましょう。
まとめ
末端冷え性には、自律神経の乱れや気の巡りの滞りなど、様々な原因が考えられます。まずは、自分の冷えのタイプを知り、それに合ったセルフケアを始めることが、冷え性改善の第一歩です。
規則正しい生活習慣を心がけ、体を冷やさない工夫をするとともに、ハーブやアロマなどの自然の力を上手に取り入れることで、つらい末端冷え性を和らげ、冷えを感じない快適な毎日を手に入れましょう。