テニスを楽しまれているドライバーの皆さん、プレー中やプレー後に肘の外側にズキッとした痛みを感じたことはありませんか?あるいは、日常生活で物を掴んだり、ドアノブを回したりする際に、肘に痛みが走ることはないでしょうか。もし心当たりがあれば、それは「テニス肘」かもしれません。
テニス肘は、その名の通りテニスプレイヤーに多く見られる症状ですが、実はテニスをしない人でも、日常生活や仕事での腕の使い方によって発症することがある、身近な肘のトラブルの一つです。そして、この肘の痛みは、テニスのパフォーマンスを低下させるだけでなく、車の運転にも影響を及ぼす可能性があります。例えば、ハンドルを回す際に肘が痛んだり、重い荷物をトランクに積むのが辛くなったり、痛みのために運転中の集中力が散漫になったりすることも考えられます。
この記事では、テニス肘とは一体どのような状態なのか、なぜ起こるのか、どのような症状が現れるのか、そしてご自身でできる予防法や対処法、専門家への相談の重要性などについて、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。正しい知識を身につけてテニス肘を克服し、テニスも運転も、そして日常生活も快適に送りましょう。
「テニス肘」とは何か?正式名称と基本的な知識
まず、「テニス肘」という言葉について、基本的なことを理解しておきましょう。
テニス肘の定義
テニス肘とは、肘の外側(親指側)から前腕にかけて起こる痛みの総称です。特に、手首を手の甲側に反らせる(背屈させる)動作や、物を掴んで持ち上げる動作などで痛みが強くなるのが特徴です。
正式名称:上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)
テニス肘の医学的な正式名称は「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」と言います。
少し難しい名前ですが、これも分解して見てみましょう。
- 上腕骨(じょうわんこつ):肩から肘までの間の腕の骨(いわゆる二の腕の骨)のことです。
- 外側上顆(がいそくじょうか):肘の外側にある、骨の出っ張った部分です。ここには、手首を手の甲側に反らせる筋肉(手関節伸筋群:しゅかんせつしんきんぐん)や、前腕を外側にひねる(回外させる)筋肉(前腕回外筋群:ぜんわんかいがいきんぐん)の腱(けん:筋肉と骨をつなぐ強靭な結合組織)がたくさん付着しています。
- 炎(えん):炎症が起きている状態を指します。
つまり、上腕骨外側上顆炎とは、肘の外側の骨の出っ張り(上腕骨外側上顆)に付着している腱やその周辺組織に、繰り返しの負担によって炎症が起こり、痛みが生じる状態なのです。
痛むメカニズム
手首を手の甲側に反らせたり、物を強く握ったり、腕を外側にひねったりする動作を繰り返すと、肘の外側上顆に付着している筋肉や腱に、引っ張られる力(牽引力)やこすれる力(摩擦力)が繰り返し加わります。この負荷が過度になると、腱の付着部で微細な損傷や炎症が起こり、痛みとして感じられるようになります。これがテニス肘の痛みのメカニズムです。
テニス以外の原因
前述の通り、テニス肘はテニスプレイヤー特有のものではありません。以下のような動作でも起こり得ます。
- ゴルフ:バックハンドストロークの際に、手首や肘に負担がかかることがあります。
- バドミントン、卓球、剣道などのラケットや竹刀を使うスポーツ。
- 日常生活や仕事での手首や腕の使いすぎ:
- パソコン作業:マウス操作やキーボード入力で、手首を反らせた状態が続くと負担がかかります。
- 料理:包丁で硬いものを切る、フライパンを振るなどの動作。
- 重い物を持つ:買い物袋やカバン、赤ちゃんを抱っこするなど。
- 雑巾やタオルを絞る動作。
- ドライバーやレンチなどの工具を使う作業。
- 楽器演奏(ピアノ、ギターなど)。
- 裁縫や編み物など、手先を細かく使う作業。
このように、手首や前腕の筋肉を繰り返し使う動作であれば、誰にでもテニス肘が起こる可能性があるのです。
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)との違い
肘の痛みでよく聞かれるものに「ゴルフ肘」がありますが、これはテニス肘とは痛む場所が異なります。
- テニス肘(上腕骨外側上顆炎):肘の外側の痛み。手首を手の甲側に反らせる筋肉(伸筋群)の腱の付着部の炎症です。
- ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎):肘の内側(小指側)の痛み。手首を手のひら側に曲げる筋肉(屈筋群)の腱の付着部の炎症です。
どちらも使いすぎによる腱の炎症ですが、負担のかかる筋肉や動作が異なるため、痛む場所が逆になるのです。
テニス肘の代表的な症状
テニス肘になると、以下のような症状が現れやすくなります。
- 肘の外側の痛み:これが最も特徴的な症状です。具体的には、以下のような動作で痛みを感じたり、痛みが強くなったりします。
- テニスのバックハンドストローク時(特にボールがラケットに当たるインパクトの瞬間)
- 物を掴んで持ち上げようとする時(例:やかん、フライパン、コーヒーカップ、重いカバンなど、特に手のひらを下に向けて持ち上げる時)
- タオルや雑巾を絞る時
- ドアノブを回したり、瓶のフタを開けたりする時
- 手首を手の甲側に反らせる(背屈させる)時
- パソコンのマウス操作やキーボード入力時
- 蛇口をひねる時
- 肘の外側を押すと痛む(圧痛): 肘の外側の骨の出っ張り(上腕骨外側上顆)の少し下あたり(前腕の筋肉が付着する部分)を押すと、ピンポイントで強い痛みを感じます。
- 痛みが前腕の外側や手首、時には指にまで広がる(放散痛): 症状が進行すると、肘の外側だけでなく、そこから手首にかけての前腕の外側の筋肉に沿って痛みが広がったり、ピリピリとしたしびれ感を伴ったりすることがあります。
- 握力の低下: 痛みのために、物を強く握れなくなったり、握力が弱くなったように感じたりすることがあります。ひどい場合は、コップを持つのも辛くなることがあります。
- 肘の曲げ伸ばしでの違和感や軽い痛み: 日常生活での何気ない肘の動きでも、違和感や軽い痛みを感じることがあります。
- 症状の進行: 初期の段階では、テニスや特定の作業をした後にだけ軽い痛みを感じ、休むと治まることが多いです。しかし、症状が進行すると、運動中にも常に痛みを感じるようになり、さらに悪化すると、安静にしていてもズキズキとした痛みが続いたり、日常生活の些細な動作(例えば、歯磨きや顔を洗う動作など)でも強い痛みが出たりするようになります。
これらの症状に心当たりがある場合は、テニス肘の可能性があります。
なぜテニス肘になってしまうのか?主な原因
テニス肘は、様々な要因が複合的に絡み合って発生します。主な原因を理解しておくことは、予防や改善に繋がります。
1. テニスプレーにおける要因
テニスというスポーツの特性上、ラケットを使ったボールの打撃動作が主な原因となります。
- 不適切なフォーム:
- 特にバックハンドストロークの際に、手首を過度に使ったり、体幹をうまく使えず腕の力だけで打とうとしたり(手打ち)、肘が体から離れすぎたりするフォームは、肘の外側に大きな負担をかけます。
- フォアハンドストロークでも、手首をこねるような打ち方は負担になります。
- ラケットの問題:
- 重すぎるラケット:自分の筋力に合わない重いラケットは、スイング時に腕に余計な力が入り、肘への負担が増します。
- 硬すぎるラケットフレーム:フレームが硬いと、ボールの衝撃が腕に伝わりやすくなります。
- ガットのテンションが高すぎる:ガットを硬く張りすぎると、ボールの衝撃が腕にダイレクトに伝わりやすくなります。
- グリップサイズが合わない:細すぎるグリップや太すぎるグリップは、ラケットをしっかりと握るために余計な力が必要になり、前腕の筋肉を緊張させます。
- ボールのインパクト時の衝撃: ボールをラケットの真芯(スイートスポット)で捉えられない「オフセンターヒット」は、ラケット面がぶれやすく、その衝撃が手首や肘に強く伝わります。
- 練習量の過多、急な増加: 急に練習時間を増やしたり、試合が続いて十分な休息が取れなかったりすると、筋肉や腱に疲労が蓄積し、炎症が起こりやすくなります。
2. 日常生活や他のスポーツでの腕の使いすぎ(オーバーユース)
テニスをしていなくても、手首や前腕の筋肉を繰り返し使う動作は、テニス肘の原因となり得ます。
- 仕事での反復作業:
- パソコン作業:長時間のマウス操作やキーボード入力は、手首を反らせた状態が続くため、前腕の伸筋群に負担をかけます。
- 料理:包丁で硬いものを切る、フライパンを繰り返し振る、重い鍋を持つなどの動作。
- 裁縫や編み物など、手先を細かく使う作業。
- 楽器演奏(ピアノ、ギターなど)。
- 大工仕事やガーデニングなど、工具を使ったり、物を掴んだりする作業。
- 重い荷物の運搬作業。
- 他のラケットスポーツ:バドミントン、卓球、スカッシュなど。
- 投球動作を伴うスポーツ:野球、ソフトボールなど。
3. 筋力不足・柔軟性不足
体の状態も、テニス肘の発生に大きく関わっています。
- 前腕の伸筋群(手首を反らせる筋肉)の筋力不足:これらの筋肉が弱いと、ラケットを振る際の衝撃や繰り返し動作による負荷に耐えきれず、腱が損傷しやすくなります。
- 前腕の屈筋群(手首を曲げる筋肉)との筋力バランスの悪さも影響します。
- 手首や肘、肩関節の柔軟性不足:これらの関節の動きが硬いと、スイングや作業の際に無理な力がかかりやすくなり、肘への負担が増します。
- 体幹や肩甲骨周りの筋力不足・機能低下:体幹や肩甲骨周りが不安定だと、腕の力だけでラケットを振ったり、作業をしたりする「手打ち」状態になりやすく、結果として肘に負担が集中します。
4. ウォーミングアップ不足・クールダウン不足
- ウォーミングアップ不足:テニスや作業の前に、手首、肘、肩などを十分に温めず、筋肉や腱が硬い状態で急に運動や作業を始めると、組織が損傷しやすくなります。
- クールダウン不足:運動後や作業後に、使った筋肉(特に前腕の伸筋群)をストレッチなどでケアしないと、筋肉の疲労が蓄積し、硬くなり、腱への負担が増したままになります。
5. 加齢による腱の変性
年齢とともに、腱のコラーゲン線維が変性し、弾力性が失われ、もろく傷つきやすくなる傾向があります。そのため、一般的に30代後半から50代の方にテニス肘が多く見られると言われています。若い頃と同じような運動量や作業量でも、加齢によって腱が耐えきれずに炎症を起こしやすくなるのです。
6. その他
- 間違ったトレーニング方法:急激に負荷を上げたり、自己流の無理なトレーニングをしたりする。
- 疲労の蓄積:十分な休息を取らずに、疲れた状態でテニスや作業を続ける。
- 筋肉のアンバランス:体全体の筋肉のバランスが悪いと、特定の部位に負担が集中しやすくなります。
これらの要因が一つ、あるいは複数絡み合って、テニス肘が引き起こされるのです。
テニス肘を予防するためにできること
テニス肘は、適切な知識を持ち、日頃から予防策を講じることで、その多くを防ぐことができます。
1. 正しいテニスフォームの習得
- 特にバックハンドストロークのフォームを見直すことが重要です。手首だけで打つのではなく、体幹の回転や肩、股関節など、体全体を使ったスムーズな動きでボールを打つように意識しましょう。
- 必要であれば、テニススクールに通ったり、経験豊富なコーチや指導者にフォームを見てもらったりして、専門的なアドバイスを受けるのが効果的です。
2. 適切なラケット選び
- 自分の体力や技術レベルに合ったラケットを選びましょう。
- 重さ:重すぎるラケットは腕に負担がかかります。
- フェイスサイズ:スイートスポットが広い大きめのフェイスサイズのラケットは、オフセンターヒットが減り、衝撃を和らげる効果があります。
- グリップサイズ:細すぎるグリップや太すぎるグリップは、握る際に余計な力が必要になります。握った時に、指と手のひらの間に指が1本入る程度の隙間ができるのが目安と言われています。
- ガットの種類とテンション:柔らかい素材のガット(ナチュラルガットやナイロンマルチフィラメントなど)を選んだり、ガットのテンション(張りの強さ)を少し緩めにしたりすると、ボールの衝撃が緩和されます。
- ショップの専門家やコーチに相談して、自分に最適なラケットを見つけるのがおすすめです。
3. 練習量のコントロール
- 一度に長時間練習したり、毎日続けて練習したりするのではなく、適度に休息日を設け、肘や腕を休ませる時間を作りましょう。
- 急激に練習時間を増やしたり、試合の頻度を上げたりするのは避け、徐々に体を慣らしていくことが大切です。
- 痛みや違和感を感じたら、無理せず練習を中断し、症状が悪化しないように注意しましょう。
4. ウォーミングアップとクールダウンの徹底
- ウォーミングアップ(準備運動): テニスのプレー前や練習前には、必ず5~10分程度のウォーミングアップを行いましょう。軽いジョギングやウォーキングで体を温め、その後、手首、肘、肩、肩甲骨周り、体幹などを中心に、動的ストレッチ(関節を動かしながら筋肉を温め、柔軟性を高めるストレッチ)を行うのが効果的です。
- クールダウン(整理運動): プレー後や練習後も、5~10分程度のクールダウンを忘れずに行いましょう。軽いストレッチで、使った筋肉(特に前腕の手首を反らせる伸筋群)をゆっくりと伸ばし、疲労回復を促します。
5. 筋力トレーニングとストレッチ
テニス肘の予防には、関連する筋肉の強化と柔軟性の向上が不可欠です。
- 前腕伸筋群の強化:
- リバースリストカール:手の甲を上にして軽いダンベル(またはペットボトルなど)を持ち、肘を固定したまま、手首をゆっくりと上に反らせます。
- ゴムチューブやセラバンドを使った手首の背屈運動も効果的です。
- 前腕屈筋群とのバランス:伸筋群だけでなく、反対側の屈筋群(手首を手のひら側に曲げる筋肉)もバランス良く鍛えることが大切です。
- 握力強化:ハンドグリップやテニスボールなどを握る運動も、ラケットを安定して握るために役立ちます。
- 体幹トレーニング:プランク、サイドプランク、バードドッグなどで、体幹を安定させ、手打ちを防ぎ、体全体を使った効率的なスイングをサポートします。
- 肩甲骨周りのストレッチ・トレーニング:肩甲骨の動きをスムーズにし、肩や腕への負担を軽減します。
- 手首・肘・肩の柔軟性を高めるストレッチ:各関節を様々な方向にゆっくりと伸ばし、可動域を広げましょう。
6. サポーターやテーピングの活用
- 肘への負担を軽減するテニス肘専用のサポーター(エルボーバンドなど)や、筋肉の動きを助けるキネシオロジーテープなどを、予防的に使用するのも有効な手段です。エルボーバンドは、前腕の筋肉の付け根(肘に近い部分)に巻くことで、腱への負担を和らげる効果が期待できます。
- ただし、これらは根本的な解決策ではないため、頼りすぎず、上記の他の予防策と併用することが大切です。
7. 日常生活での注意
- 重い物を持つ際は、手のひらをできるだけ上に向けて持つようにしたり、両手で持ったりするなど、肘への負担を軽減する工夫をしましょう。
- パソコン作業や家事など、手首や腕を酷使する作業では、こまめに休憩を取り、ストレッチなどを行うようにしましょう。
8. 自分の体の声を聞く
- これが最も重要なことの一つです。肘に少しでも違和感や軽い痛みを感じたら、「これくらい大丈夫だろう」と放置せず、無理をせずに休息を取り、早めに対処するようにしましょう。初期の段階であれば、安静にするだけで改善することも少なくありません。
これらの予防策を日頃から意識して実践することで、テニス肘の発症リスクを大幅に減らすことができます。
テニス肘になってしまったら?初期対応と治療法
予防策を講じていても、残念ながらテニス肘になってしまうこともあります。その場合は、できるだけ早く適切な対応をすることが、早期回復への鍵となります。
初期対応(RICE処置を参考に)
肘に痛みを感じ始めたら、まずは応急処置として「RICE処置」の原則を参考に、以下の対応を行いましょう。
- Rest(安静):痛みの原因となっている動作(テニスや特定の作業など)を直ちに中止し、肘をできるだけ動かさないように安静にします。
- Ice(冷却):炎症や腫れを抑えるために、氷をビニール袋に入れ少量の水を加えた氷のうや、アイスパック、保冷剤などをタオルで包み、痛む部分(肘の外側)に15~20分程度当てて冷やします。これを1日に数回繰り返します。この冷却は、主に炎症が強い急性期(痛み始めてから2~3日程度)に行います。
- Compression(圧迫):テニス肘用のサポーターや弾性包帯などで、肘の外側を軽く圧迫することで、腫れを抑えたり、腱への負担を軽減したりする効果が期待できます。ただし、強く締め付けすぎると血行が悪くなるため、注意が必要です。
- Elevation(挙上):可能であれば、肘を心臓より高い位置に保つことで、腫れを軽減するのに役立ちます。
RICE処置は、あくまで応急処置であり、これだけで治るわけではありません。
医療機関(整形外科など)の受診
以下のような場合は、自己判断せずに、必ず整形外科などの医療機関を受診し、医師の正確な診断を受けてください。
- 痛みが非常に強い、または我慢できない場合
- RICE処置をしても、数日経っても痛みが改善しない、または悪化する場合
- 肘を動かさなくてもズキズキと痛む場合
- 日常生活(物を掴む、ドアノブを回すなど)にも支障が出るほどの痛みがある場合
- 肘の周辺に明らかな腫れや熱感がある場合
- 腕や手にしびれがある場合(他の疾患の可能性も考慮)
医師は、問診(いつから、どのように痛むか、テニス歴、仕事内容など)、視診(腫れや変形の有無など)、触診(痛む場所の確認、特定のテスト法:トムゼンテスト、チェアテスト、中指伸展テストなど)に加え、必要に応じてレントゲン検査(骨に異常がないか確認するため)、超音波検査(エコー検査:腱や筋肉の状態をリアルタイムで確認するため)、まれにMRI検査などを行い、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)であるか、あるいは他の疾患(例えば、肘部管症候群などの神経障害、変形性肘関節症、関節リウマチなど)の可能性はないかなどを診断します。
その診断に基づいて、以下のような治療が行われます。
- 薬物療法: 痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDsなど)の内服薬や、湿布、塗り薬(消炎鎮痛成分配合)などが処方され、炎症と痛みを抑えます。
- 注射療法: 痛みが非常に強い場合や、保存的治療でなかなか改善しない場合に、炎症を起こしている腱の付着部やその周辺に、局所麻酔薬やステロイド剤などを注射する治療法です。ステロイド注射は効果が高い反面、繰り返し行うと腱を弱くするリスクもあるため、医師の慎重な判断のもとで行われます。最近では、PRP療法(多血小板血漿療法)という、自身の血液から抽出した成分を注射する再生医療も選択肢の一つとして考えられることがあります(ただし、保険適用外で高額になる場合があります)。
- 物理療法: 医療機関のリハビリテーション科や、提携する施設などで、以下のような物理療法が行われることがあります。
- 温熱療法:ホットパックや赤外線、マイクロ波などで患部やその周辺を温め、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減します(急性期を過ぎてから行われることが多い)。
- 電気治療:低周波治療、干渉波治療、TENS(経皮的電気神経刺激)などで、痛みの緩和、血行促進、筋弛緩などを図ります。
- 超音波治療:高周波数の音波の振動を利用して、体の深部を温めたり(温熱効果)、微細なマッサージ効果を与えたり(ミクロマッサージ効果)することで、組織の修復を促したり、痛みを和らげたりします。
- 体外衝撃波治療(ESWT):患部に衝撃波を照射することで、痛みの感覚を和らげたり、組織の修復を促したりする比較的新しい治療法です。難治性のテニス肘に有効な場合がありますが、実施している医療機関は限られます。
- 装具療法: テニス肘専用のバンド(エルボーバンド)やサポーターを処方されることがあります。これらは、前腕の伸筋群の付け根にかかる負担を分散・軽減し、痛みを和らげる効果が期待できます。
- リハビリテーション: 理学療法士や作業療法士の指導のもと、痛みが落ち着いてきたら、以下のようなリハビリテーションを行います。
- ストレッチ:硬くなった前腕の伸筋群や屈筋群、手首、肘、肩関節の柔軟性を高めるためのストレッチ。
- 筋力トレーニング:弱っている前腕の筋肉(特に伸筋群)、手首、肩甲骨周りの筋肉などを、徐々に強化していくトレーニング。
- 運動療法:肘に負担のかからない正しい体の使い方や、テニススイングのフォーム修正なども含めた運動指導。
- 手術: 上記の保存的治療(手術以外の治療)を長期間(通常6ヶ月~1年以上)続けても症状が改善せず、日常生活や仕事に大きな支障がある場合には、まれに手術が検討されることもあります。手術では、炎症を起こしている腱の悪い部分を切除したり、腱の付着部をきれいにしたりします。
整骨院・接骨院での施術
整骨院や接骨院(柔道整復師が施術を行う場所)でも、テニス肘の症状に対するケアを受けることができます。ただし、必ず最初に医療機関(整形外科など)を受診し、医師の診断と指示(同意)のもとで施術を受けることが原則です。特に、痛みが強い場合や、他の疾患の可能性が否定できない場合は、自己判断で整骨院だけにかかるのは避けましょう。
医師との連携のもと、整骨院・接骨院では主に以下のようなアプローチでテニス肘の改善を目指します。
- 手技療法: マッサージ、ストレッチ、関節モビライゼーション(関節の動きを良くする手技)、筋膜リリース(筋肉を包む膜の癒着を剥がす手技)、トリガーポイント療法(痛みの引き金となる筋肉の硬結にアプローチする手技)など、施術者の手による様々な技術を用いて、炎症を起こしている腱の付着部や、硬くなった前腕の伸筋群の緊張を和らげ、血行を促進し、肘関節や手首関節の可動域を改善し、痛みを軽減します。
- 物理療法: 電気治療器(低周波、干渉波、ハイボルテージ、マイクロカレント、EMSなど)、超音波治療器、温熱療法機器、冷却療法機器などを用いて、痛みの緩和、炎症の抑制、組織の修復促進、筋力強化のサポートなどを行います。
- 運動療法・リハビリテーション指導: 症状の回復段階に合わせて、自宅でできる効果的なストレッチやエクササイズ、肘に負担のかからない正しい体の使い方、テニスフォームに関するアドバイス(専門的なコーチングとは異なります)、再発予防のためのトレーニング指導などを行います。
- テーピング療法: 伸縮性テープ(キネシオロジーテープなど)や非伸縮性テープ(ホワイトテープなど)を用いて、患部を保護・サポートしたり、筋肉の動きを助けたり、痛みを軽減したりします。
整骨院・接骨院のメリットとしては、手技療法を中心としたきめ細やかなアプローチや、日常生活のアドバイス、セルフケア指導などが受けられる点、そして比較的通いやすい点などが挙げられます。
テニス肘の治療期間と注意点
- 治療期間: テニス肘の治療にかかる期間は、症状の重症度、発症からの期間、年齢、治療への取り組み方、そして日常生活やテニスの頻度などによって大きく異なります。軽いものであれば数週間で改善することもありますが、一般的には数週間~3ヶ月程度、症状が慢性化していたり、重症だったりする場合は、半年以上かかることもあります。
- 焦らず、専門家の指示に従い、根気強く治療とリハビリに取り組むことが大切です。
- 痛みが軽減しても、自己判断で急にテニスや負担のかかる作業を再開しないようにしましょう。必ず医師やセラピストの許可を得て、ウォーミングアップを入念に行い、徐々に負荷を上げていくなど、段階的な復帰を心がけてください。無理をすると、再発のリスクが高まります。
- 再発予防のために、なぜテニス肘になったのか、根本的な原因(スイングフォームの問題、筋力不足、柔軟性不足、不適切なラケット、練習量の過多など)を見直し、改善していくことが非常に重要です。
- 日常生活でも、肘に負担をかけないように、重い物を持つ時の持ち方や、手首を使う作業の仕方などを工夫しましょう。
テニス肘に対する一般的な整骨院のアプローチ(茨木市・高槻市の地域性を考慮して)
(※特定の整骨院名を出す指示がないため、ここでは一般的な整骨院のアプローチとして記述し、茨木市・高槻市という地域性は文脈に含めます)
大阪府の茨木市や高槻市といった地域には、テニス愛好家も多く、テニス肘をはじめとするスポーツ障害の治療やケアに力を入れている整骨院も少なくありません。そのような整骨院では、一般的に以下のようなアプローチでテニスプレイヤーや肘の痛みでお悩みの方をサポートしています。
- テニス肘に特化した専門知識と豊富な施術経験: テニス特有の動作や、テニス肘が起こりやすい体の使い方、そして効果的な治療法や予防法に関する専門知識を持ち、多くのテニス肘患者さんの施術経験があるスタッフが対応します。
- 詳細なカウンセリングと動作分析による根本原因の特定: 単に肘の痛む場所だけでなく、テニスのプレー状況(頻度、レベル、フォームなど)、日常生活での腕の使い方、体の歪み、筋力バランス、柔軟性などを詳細に聞き取り、分析することで、なぜテニス肘になったのかという根本的な原因を突き止めます。
- 手技療法、物理療法、運動療法を組み合わせたオーダーメイドの施術: 一人ひとりの症状や原因、目標(痛みをなくしたい、早くテニスに復帰したい、再発を防ぎたいなど)に合わせて、マッサージやストレッチ、関節調整といった手技療法、最新の電気治療器や超音波治療器などを用いた物理療法、そして再発予防とパフォーマンス向上のための運動療法を効果的に組み合わせた、オーダーメイドの施術プランを提供します。
- 肘だけでなく、肩甲骨や体幹など全身のバランスを考慮したアプローチ: テニス肘の原因は、必ずしも肘だけにあるとは限りません。肩甲骨の動きの悪さや、体幹の不安定さが、腕や肘への過度な負担に繋がっていることもあります。そのため、肘だけでなく、肩、肩甲骨、背骨、骨盤といった全身のバランスを整えるようなアプローチを行うこともあります。
- 再発予防のためのセルフケア指導とトレーニングプランの提案: 自宅でできる効果的なストレッチやエクササイズ、ウォーミングアップやクールダウンの方法、適切なラケット選びや練習量の管理、日常生活での注意点など、患者さん自身が積極的に取り組めるセルフケア方法を具体的に指導し、長期的なサポートを行います。
- 地域(茨木市・高槻市)のテニス愛好家のサポート: 地域のテニスクラブやスクールと連携したり、テニス愛好家向けのセミナーやコンディショニング指導を行ったりするなど、地域のテニスコミュニティの健康増進に貢献している整骨院もあります。
もしあなたが茨木市や高槻市、またその近隣にお住まいで、テニスによる肘の痛みや不調にお悩みでしたら、テニス肘の治療に詳しい整骨院に一度相談してみることをお勧めします。
まとめ
今回は、「テニス肘とは?」というテーマでお届けしました。
- テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、肘の外側に起こる痛みで、テニスプレイヤーだけでなく、日常生活や仕事で手首や腕をよく使う人にも発症する可能性があります。
- 主な原因は、不適切なフォーム、オーバーユース、筋力不足、柔軟性不足など、様々な要因が複合的に絡み合っています。
- 予防のためには、正しいフォームの習得、適切なラケット選び、練習量のコントロール、ウォーミングアップ・クールダウンの徹底、そして日頃からの筋力トレーニングとストレッチが重要です。
- テニス肘になってしまったら、無理せず安静にし、早期に専門家(整形外科、テニス肘に詳しい整骨院など)に相談し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
- 治療は、薬物療法、物理療法、運動療法(リハビリ)、手技療法などが組み合わせて行われ、焦らず根気強く取り組むことが回復への鍵となります。
テニス肘は、つらい痛みでテニスを楽しむことを妨げるだけでなく、日常生活や運転にも影響を及ぼすことがあります。しかし、適切な知識を持ち、正しいケアと予防を行うことで、必ず改善し、再び快適にテニスや日常生活を送ることができるようになります。
肘のケアをしっかり行い、テニスも、そして安全で快適なカーライフも、思う存分楽しんでいきましょう。