肩こりは、首から背中にかけての筋肉がこわばり、張りや痛みなどの不快症状を引き起こす状態です。頭痛や吐き気などを伴うこともあり、日常生活で常に悩まされている方も多いのではないでしょうか。肩こりは放置すると症状が慢性化し、疲労感やストレスまで増大させる可能性があります。本記事では、肩こりの基本的な仕組みから主な原因、日常でできる予防法、そして改善のためのセルフケアや医療的アプローチまでをわかりやすく解説します。ぜひ、ここで紹介する知識を取り入れ、健康的で快適な毎日を目指してください。
肩こりとはどのような状態か
肩こりとは、首筋や首のつけ根から肩、背中にかけて「張りを感じる」「こり固まったように思う」「痛む」といった症状が見られる状態のことを指します。特徴的な症状としては、肩甲骨周辺に負荷がかかりやすい僧帽筋が緊張状態となり、血行不良を起こしやすくなることです。また、肩こりから派生して頭痛や吐き気、めまいなどが起こる場合もあります。
肩こりの主な症状
肩こりの自覚症状は多岐にわたります。たとえば、肩や首のまわりが重い感じがする、じわじわと持続する痛みがある、腕が上げづらくなる、首を回すと引っかかるように感じるなどが代表的です。加えて、長期間の肩こりが続くと睡眠の質が低下しやすく、集中力の低下やイライラといった精神面の不調にもつながりやすい点が問題です。単なる筋肉痛だと放置せず、早めにケアしていくことが大切です。
肩こりの原因
肩こりには、何らかの病気が背景にある場合と、はっきりした疾患名こそつかなくても日常生活での習慣や姿勢が影響して起こる場合とがあります。実際には、後者の「原因不明だが生活習慣や姿勢の乱れが複合的に影響している」ケースが非常に多いと言われています。ここでは、特に多くの方が悩まされている主な原因を紹介します。
同じ姿勢でのデスクワーク
パソコンやスマートフォンなどを長時間同じ姿勢で操作していると、肩甲骨周辺や首の筋肉が常に緊張し、血流不足を引き起こします。さらに、前かがみの姿勢を続けると首や肩に余計な負担がかかり、首周辺の神経を圧迫する可能性もあります。デスクワークの多い現代人にとって、姿勢不良は肩こりの大きな要因と言えるでしょう。
目の疲労
パソコンやスマートフォン、タブレットの長時間使用は目への負担を増大させます。度の合わないメガネの使用やブルーライト、紫外線などの刺激が加わると、慢性的な眼精疲労につながりやすいのです。目が疲れると、首や肩の筋肉に緊張が波及し、肩こりがいっそう悪化することがあります。特に集中して画面を見続けると瞬きの回数も減少し、目の乾きや肩こり、頭痛など複数の症状を同時に招きやすくなります。
運動不足による筋肉疲労と血行不良
日常的に体を動かす習慣が少ない方は、筋肉が十分に使われないことで血流が滞り、疲労物質がたまりやすくなります。さらに、座っているだけでも身体を支えるためには筋肉を使う必要があるため、運動不足が続くとちょっとした負荷ですぐ肩周辺が疲れやすくなるのです。また血行不良が起きると、疲労物質や老廃物の排出が滞り、ますますこりや痛みが抜けにくくなります。
ストレスによる緊張
精神的、あるいは肉体的なストレスにさらされると、交感神経が優位になりがちです。すると肩周囲の筋肉が強ばりやすくなり、肩こりにつながります。一時的であればリラックスや休息で元に戻りますが、日常的に強いストレスを受け続けると常に筋肉が張り詰めた状態が続き、慢性化しやすくなります。また、ストレスは睡眠の質や自律神経の働きにも影響するため、疲労感と肩こりがセットになって抜けづらい状況を生む場合もあります。
寒さによる筋肉のこわばりや自律神経の乱れ
寒い環境にいると筋肉は収縮し、肩や首をすくめる姿勢になりがちです。そうした状態が続くと、筋肉が常に緊張して血行不良を招きます。また、寒さによる自律神経の乱れは体の調節機能を低下させ、結果として筋肉が柔軟さを失うリスクも高まります。エアコンの冷気や冬場の外気温には十分に注意しましょう。
主な疾患との関連性
肩こりが慢性的に続く場合、あるいは強い痛みやしびれを伴う場合は、何か別の病気が隠れている可能性もあります。ここでは肩こり症状と関連が深い疾患について、主なものを挙げていきます。該当する症状がある方は、一度医師の診断を受けることをおすすめします。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)
加齢に伴い、肩関節周辺の組織が慢性的に炎症を起こす状態です。腕を上げたり、後ろに回したりする動作が制限され、ときに夜眠れないほど痛むこともあります。炎症が治まるまでに半年から一年半程度かかる場合もありますが、軽い運動やストレッチを続けておくことが回復を早めるうえで重要です。
変形性頸椎症
首の骨(椎骨)と椎骨の間にある椎間板の弾力が加齢によって減少すると、椎骨がとげのように変形し、頸椎の神経を圧迫します。これにより、首から肩甲骨、さらに腕や手指にかけての強い痛みやしびれが起こることがあります。首や肩の痛みがしつこく続く場合は頸椎の問題を疑いましょう。
更年期障害
女性ホルモンのバランスが乱れる更年期前後には、肩こりや疲労感、のぼせ、不安感など多彩な症状が出ることがあります。いわゆる自律神経失調症に似た状態が生じ、なかには家事や仕事に支障をきたすほど重い症状が続くケースも少なくありません。肩こりだけでなく、気持ちの浮き沈みが激しい場合も、ホルモンバランスを含めてチェックしてみるとよいでしょう。
高血圧症
最大血圧(収縮期)が140mmHg以上、または最小血圧(拡張期)が90mmHg以上の高血圧状態が続くと、肩こりや動悸、頭痛などの症状を伴うことがあります。高血圧症は心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気のリスクを高めるため、定期的な血圧の測定と生活習慣の見直しが重要です。
低血圧症
収縮期血圧が100mmHg未満の状態が続くと、めまいや立ちくらみ、だるさ、肩こりなどが起きやすいとされています。低血圧症は高血圧ほど危険性を強調されない傾向がありますが、日常生活の質を下げる原因となる場合もあるため、症状が気になる場合は医師に相談してみるとよいでしょう。
狭心症・心筋梗塞
狭心症では、心臓を取り囲む冠動脈が動脈硬化で狭くなることにより、胸の締め付け感や肩への関連痛が起こることがあります。心筋梗塞は冠動脈が完全に詰まって血流が途絶える状態で、胸や肩に激しい痛みが生じ、呼吸困難や冷や汗、吐き気などを伴うことがあります。肩こりの症状が突然強くなり、胸の痛みも同時に起こるようであれば、急いで医療機関を受診しましょう。
その他の病気
片頭痛、解離性大動脈瘤、肝臓疾患、胆石症、膵炎、脳出血、脳梗塞、パーキンソン病など、ほかにもさまざまな病気が肩こりを前兆症状として伴うことがあります。長引く肩こりや急激な痛みなどがある場合は、早めに受診して適切な検査を受けるのが望ましいでしょう。
肩こりの治療方法
肩こりの治療としては、マッサージやストレッチなどの運動療法、温熱療法、超音波や電気を用いる理学療法、サポーターなどを活用する装具療法、さらには痛みの強い部分に注射するペインクリニックなど多岐にわたります。また、筋肉や筋膜にアプローチする「筋膜リリース」や薬物療法などを組み合わせることもあります。いずれにせよ、病院やクリニックで治療を受ける前に、自分で実践できる予防策や対処法を試してみるのがよいでしょう。
日常生活でできる予防法
肩こりを重症化させず、なるべく快適に過ごすためには、原因となりやすい生活習慣を見直すことが大切です。以下に、すぐに実践できる予防策をまとめました。
適度な運動習慣を取り入れる
ウォーキングやサイクリング、水中ウォーキングなどの全身運動は血行を促進し、肩周辺のこりの緩和に効果的です。負荷の軽い運動でも継続することで筋肉の働きが改善されます。また、ヨガやラジオ体操、ストレッチなどは肩甲骨をよく動かすため、日々の隙間時間に取り入れるとよいでしょう。
肩や首を冷やさない
冷房の効いた部屋や寒い環境に長く滞在すると、首や肩の筋肉が緊張しやすくなります。夏でも直接冷気を当てないように工夫し、冬場はマフラーやハイネックで首を温かく保ちましょう。蒸しタオルやカイロを活用して首や肩を温めることも効果的です。
作業環境を整える
テレワークやオフィスワークでのパソコン作業は、長時間に及ぶことが多くなりました。モニター画面は目線より少し下に置き、肩や腕がリラックスできるキーボード位置を調整しましょう。スマートフォンを使う際も、うつむきすぎる姿勢が続くと首や肩を痛めます。長時間作業になる場合は、外付けキーボードやスタンドを活用し、1時間ごとに休憩とストレッチを挟むことを心がけると良いでしょう。
肩こりの対処法
実際に肩こりの症状を感じたとき、すぐにできる対処法を知っておくと便利です。以下のセルフケアを上手に活用しつつ、改善が見られない場合には早めに医療機関を受診しましょう。
自宅でのセルフケア
・入浴で血行を促す
ぬるめのお湯にゆったりとつかることでリラックスでき、筋肉の緊張も和らぎます。また、こっている部位に温シャワーと冷シャワーを交互にかけることで血行を促進し、疲労を軽減する方法もおすすめです。最後に熱めのシャワーで締めると爽快感が得られますが、体調と温度差に十分注意してください。
・マッサージはほど良い力加減で
強く押しすぎると逆に筋肉を傷める恐れがあります。基本的には、さする、軽く押す、もむ程度がベターです。しつこい痛みやしびれを伴う場合、専門の医師や国家資格を持つマッサージ師に相談しながら施術を受けるようにしましょう。
・市販薬の活用
肩こり緩和に効果的な外用薬(湿布や塗り薬など)や内服薬があります。また、ビタミンB群が配合されたサプリメントやドリンクを取り入れると、筋肉の代謝を助け、痛みを軽減するのに役立ちます。ただし、服用の際は用法用量を守り、注意事項をよく読んでください。
医療機関の受診
「何もしなくても肩が強くうずく」「手のしびれが出る」「階段を上る時など少し動いただけで肩が鋭く痛む」など、日常生活に支障をきたす症状があるときは、重大な疾患が隠れている可能性も考えられます。整形外科や内科など、適切な科を受診して必要な検査を受けましょう。医師の指導のもと、理学療法などを組み合わせることで症状が改善しやすくなります。
まとめ
肩こりは、長時間同じ姿勢や運動不足、ストレスなどにより慢性化しやすい症状です。原因がはっきりしないまま生活を続けていると、頭痛や吐き気、睡眠の質の低下など、心身へ多面的な影響を及ぼすことがあります。予防の要は、血行を促す運動と筋肉を冷やさない工夫、正しい姿勢の維持、さらに定期的な休息です。万が一、症状が強く現れたり長期化したりする場合は、疾患の可能性も視野に入れて早めに医療機関を受診しましょう。セルフケアと専門家のサポートを上手に組み合わせることで、肩こりの悩みから解放され、快適に過ごせる毎日を手に入れましょう。